前回は藤木説の取っ掛かり(引用➁)を紹介したのですが、ここからが重要です。少々難しそうな用語が出て来るとは思いますが、一応は自力でネット検索等も活用して、頑張って読んで見て下さい。
それでも解らない所は質問コメントを頂けると、こちらも書き方の参考に為るので助かります。
 では、今回から「藤木説の深層」に触れる事に挑戦します。(③)。

③『太素』 による『全元起本素問』 の復元
「本文を検討しようとすると、その意図の把握は困難である。その原因の一つに『次注本』編集の際に王冰が文章の順序をかなり入れ換えている点がある。この篇は多くの主題を扱っている為、『甲乙経』では主題に応じた章に分断し分散させて編集し、更に問いの部分はかなり捨てられていて、『甲乙経』からも、原型の推定が困難である。今までの注釈家の様にこじつけでも、時代錯誤でも構わずに解釈するなら王冰が手を加えたままでよいが、原著者の意図を読み取り、他の諸篇との時代比較を行い、更に臨床的に現代に生かす為には原文を再構成する必要が有る。」(『素問医学の世界』p133~135より)
重実虛


 藤木説から出発して更に後続文との整合性を検証した結果、一条の原意は「虚実の定義」では無く、寸口脈と尺膚(前腕前面の皮膚)と気(呼吸)による診断を述べている文章である事は、既に指摘(下記、遠藤)されていますので、その結論を要約引用します(➃,➄,➅.上記powerpoint画像も参照)。

➃「重実(実々)」とは?
2条「何謂重實。曰、所謂重實者、言(『甲乙』内)大熱病、気熱、脈滿、是謂重實。問曰、經絡俱實何如、何以治之。~」
 訓読:何ヲカ重実ト謂ハン。曰ク、イワユル重実トハ、内ハ大熱ヺ病ミ、気熱シ、脈滿チル。是レヲ重実ト謂ウ。問イテ曰ク、経絡俱ニ実スルハ何如ン。何ヺ以テ之ヺ治ス。~、
 意釈:どの様な事を「重実」と謂うのでしょうか?曰く。「重実」と言われる事は、内は大熱を病んで、気息が熱くなり、脈も満ちた状態です。この様に「実」反応が重なる事を「重実(実を重ねる)」と謂うのです、と。問いて曰う。経と絡が俱に実するのは何如なる状態でしょうか?どの様に治療するのでしょうか?と。~

➄「重虛(虛々) 」とは? 
10条「 帝曰、何謂重虚。岐伯曰、脈気上虛(『甲乙』脈虛気虛)、尺虛、是謂重虛也。問曰、何以治之。~」
 訓読:帝曰ク、何ヲカ重虚ト謂ハン。岐伯曰ク、イワユル重虛トハ、脈虛シ、気虛シ、尺虛ス。是レヲ重虛ト謂ウナリ。問イテ曰ク、何ヺ以テ之ヺ治ス。~
 意釈:帝が曰われた。どの様な事を「重虛」と謂うのでしょうか?と。岐伯が曰う。「重虛」と言われる事は、脈が虛し、気息が虛し、尺膚も虛す状態です。この様に「虛」反応が重なる事を「重虛(虛を重ねる)」と謂うのです、と。問いて曰う。これをどの様に治療するのでしょうか?と。~

➅「実実」、「虛虛」 と並列の「虚実」!(前回➀参照)
 一条の原意の意釈:黄帝が問いて曰いました。「虚実双方の反応(つまり、これが虚実)が現れるのはどの様な状況か?」と。岐伯は「(外)邪が盛んならば(尺膚が)実し、(内)精が奪われれば(寸口が)虚すのです」と答えました。
(遠藤次郎『「邪気盛則実,精気奪則虚」の意義』,漢方の臨床48巻5号,東亜医学協会,2001. )

(以下、「虚実」の常識?-3に続く。)