前回は『霊枢』寿夭剛柔篇に、「火熱」は用いるが、艾(モグサ)で焼く「灸」とは違う二つの方法が記載されている話でした。そして、その二法は、➀平民(布衣)に対する「火針(カシン)」と、➁貴族(大人)に対する「薬熨(ヤクイ)」です。➀の火針は、より「効率重視」の方法で、➁の薬熨は「気持ちよさ重視」の方法である事を説明しました。
 続けて別の熨法の記述を引用して見ます。これも以前に書いて置いたのですが『霊枢』の経筋篇の記述です(経筋篇の「熨法」、参照)。詳細はそちらを見て頂きたいのですが、引用した足陽明経筋の治療には「美味しい酒と焼き肉」の飲食も治療に含まれて居て、チョット羨ましく為りませんか?でも、酒を飲めない下戸(ゲコ)の人であっても「無理にでも飲ませろ!」とあるので、飲めない下戸の方には辛いかも知れません。
 今回は引用した文中に出てくる「シナモン(桂)」の苗の写真を貼って置きます。以下に要点を再掲します。
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『霊枢』経筋篇「之ヺ治スハ馬膏ヺ以テス、其ノ急ナル者ニ膏シ、白酒ヺ以テ桂ニ和エ、以テ其ノ緩ナル者ニ塗リ・・・生桑灰(『甲乙』生桑炭)ヺ以テ、之ヺ坎中ニ置キ、高下ハ坐ヺ以テ等シクス、膏ヺ以テ急スル頬ヺ熨(ヒノ)シ、且ツ美酒ヺ飲マシメ、美キ炙肉ヺ噉ワシメ、酒ヺ飲マザル者モ、自ラ強ウル也。」
  意釈: この治療には馬の膏(あぶら)を用いて痙攣した所に塗り、肉桂(シナモン)に混ぜて成分を浸出させた白酒を弛緩した所に塗って、・・・また新鮮な桑の炭を小壺(坎)の中に置いて、高さを坐った時に患部が暖まる位置に合わせる。膏を用いて痙攣した頬を温罨法(熨)して同時に上等な酒(美酒)を飲ませて、美味しい炙(アブ)った肉を沢山食べさせて、普段は酒を飲まない者にも、出来るだけ飲む様に強制します。

 ここでは「馬膏(バコウ:馬から採取した油)」と、「シナモンをブレンドした白酒」の二つを患部の「寒・熱」と「緩・急」とに応じて使い分ける事が記載されております。
 その「膏(アブラ)」と「酒」の二つは、
➀「寒」えて「痙攣(ケイレン)した患部(急)」は、→「馬膏」を用いて温罨法(オンアンポウ:熱した物を押し付けて温める=熨)し、
➁「熱」して「弛緩した患部(緩)」には、→シナモン・ブレンドの「白酒」を塗って、熱が抜け易(ヤス)く為(ス)る、
という様に「膏・酒」の使い分けが、説かれています。
 念の為に、この「使い分け」の前提条件をもう一度確認して置きますので、混乱は避ける様に御願い致します。前回の火針と薬熨(ヤクイ)の使い分けの前提条件は「体質・身分」でした。そして、今回の「膏(アブラ)」と「酒」を患部に塗る使い分けの前提条件は患部が「寒急(冷えて堅く為っている)か?・熱緩(熱くて緩んでいる)か?」ですね!
 今回の緩急に因って使い分ける「膏熨(コウイ)」のイメージは、身体の筋肉の緊張度での左右差を診て、収縮(急)した側を「温めた馬油のオイルマッサージ」で緩めて、弛緩した側をシナモンのアロマ酒を塗って引き締めてバランスを取る方法?、と現代風に言い換える事も出来ると思います。
(「熨」のイメージ-4へ続く)