蓬松養生院(旧・柳原はりきゅう院)

「森立之研究会」や「伝統医療游の会」など、伝統医学の古典考証や研究を綴ります。

2020年04月

 当院の熨法について(27)、「熨」のイメージ-2

 前回は「気持ちの良い温かさと共に緩める」意味を含んで居る字の使用例を伝統医学の古典から探索する事にした話でした。
 そして以前にも書いておいたのですが、先ず気になった所は、『霊枢』寿夭剛柔篇(ジュヨウゴウジュウヘン)』の記載です(古典の温罨法「熨法」、参照)。以下に要点を再掲して置きます。

 『霊枢』寿夭剛柔篇「布衣ヺ刺ス者ハ、火ヺ以テ之ヺ焠(ニラ)グ、大人ヺ刺ス者ハ、薬ヺ以テ之ヺ熨(ヒノ)ス。」
  意釈: 体質の強い肉体労働者などの平民(布衣)には火針(火で鉄を赤熱して刺す針)を用います。体質の弱い貴族(大人)には、生薬の温湿布で縮こまった皺を伸ばす様に温熱します!と。

 ここには「火針(カシン:火で鉄が赤熱するまで焼いてから刺す針)」と、「薬熨(ヤクイ:生薬の温湿布)」との二つ方法が記載されております。
 その二つの方法は、
➀平民(布衣)に対しては、→「火針」を使って短時間で効率的に治療し、
➁貴族(大人)には、→「薬熨」で手間・暇と費用を掛けてでも「苦痛なく、気持ち良く」行う、
と使い分ける事が説かれています。
 使い分けの時代的な背景としては、古代中国に於いて為されていた治療の説明なので「身分差別」も前提条件に含まれていたと考えるべきでしょう(現在の差別容認の発言ではありませんので、念のため)。
 この二つの方法は、どちらも「火熱」を用いますが、灸とは違って「艾(モグサ)」で焼く訳では在りません。紙巻きの棒灸へのアレンジから出発した当院の「艾は不使用の温熱療法」のイメージは、➀と➁ではどちらか?と言えば、➁に近いと思います。
 しかし、➁の「薬熨」に近いとは言っても「生薬は不使用」なので「薬」の字が抜けた「熨」法です。
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 今回はFacebook「柳原はりきゅう院」 2016年8月30日 の投稿より、陶筒バージョンの使用中の写真を貼って置きます。記事は「5才の女の子もお灸します。」となっております。御覧の通りに子供でも怖がらずに気持ち良く受けて頂けます。
 当時はまだ呼称が未定だったので、「お灸」と仮称しておりますが、より正確には「当院流の熨」法です。
(「熨」のイメージ-3へ続く)

当院の熨法について(25)、「熨法」とは?-17

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 今回はスチール缶バージョンの外観写真を貼って置きます。
 前回は、「予熱部」と「燃焼部」の内径を共に大幅拡大したバージョンアップで、「燃焼面の形」が先端の開口部から奥に凹(ヘコ)んで変形した話でした。
 この「燃焼面の変形」には、実用的には良い点の変化を伴いました。以前の使用状況は、陶筒バージョンでは、燃焼面が開口部とほぼ真っ直ぐに平らなので、直接にタオルに触れます。ですから連続使用で熱を奪い過ぎると段々に消火されて終(シマ)って居ました。その故(ユエ)に治療中は、なるべく要点に絞って、押し当てる回数を少なくして、また時間的な使用間隔を開けて火を休ませ、吹く事も余りやると疲れるので自然な回復を待って常に火力の様子を見ながらの使用でした。
 スチール缶バージョンの「変形した燃焼面」では、詰めた燃料がこんなに不安定そうな形に成って居て、一気に崩れて内容物が飛び出したりしないのか?と心配に見えるかも知れませんが「圧縮固形化のメカニズム」は意外に強力で、一度高温に成ればこの形へと堅く焼き固まって行きます。バージョンアップで「変形した燃焼面」は、結果的に燃焼部の内径に真っ直ぐな面だった以前のバージョンよりも面積はズッと拡大されますので、息を吹き込んでの火力の再起が遙かに容易に成ったのです。この様にして、筒状部分の「内径の太さ」が燃焼の様相に大きく影響する要因で在る事が判りました。
 さて、前提条件と背景の解説は、これくらいで十分と思いますので、次回から「この温熱療法の呼称」を決めた経緯の話に入ります。
(「熨」のイメージ-1へ続く)

当院の熨法について(24)、「熨法」とは?-16

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 前回は、燃料の「詰まり問題」のボトルネック (bottleneck:隘路) は「燃焼部」だけでは無く「予熱部」と「燃焼部」の内径を共に大幅拡大する必要が有った事が、偶然が幸いして効率的に見い出された話でした。
 その前回の構造分析の図解の中の「燃焼面(構成要素の➃)」について、説明を補足します。今回は、スチール缶バージョンの実際の燃焼面の写真を貼って置きます。写真の燃焼面を見ると、先端の開口部から奥に大きく抉(エグ)った様に凹(ヘコ)んで居るのは判りますね!
 これは、周辺部は金属に接して熱を奪われるから燃焼が遅れて中心部から先に燃えた結果の様子です。難燃性の粉末炭は周辺部に移動し蓄積して行きユックリと燃焼して厚味を減じながら先端へと押し出されて行きます。
 周辺の金属に接して「奪われた熱」は、金属を伝導して予熱部で燃焼前の燃料を予熱する役割を果たしていると思われます。(「熨法」とは?-17へ続く)

(「熨法」とは?-17へ続く)


当院の熨法について(23)、「熨法」とは?-15

 前回は、「無煙無臭化」を果たす為に、艾(モグサ)に見切りを付けて、粉末炭を混合した燃料素材の配合などに苦心した話でした。その「艾に見切りを付け」たの言については、特に誤解されたく無い点ですので、念の為に説明を追加します。あくまでもこの当院のやり方で「大量に燃焼させても無煙無臭化を果たす為」には、艾は不向きだと言っているだけで、お灸全般の有効性を否定している訳では無いのです。
 「無煙無臭化」の目標さえ放棄すれば、これ程素晴らしい燃焼材料は他に無いのです。火力が弱まって消えて終ったか?の様に見えても、チョット吹けば一瞬で火力が再起する通気性と燃焼性の良さは、数々の試行を重ねた私の実感です。それが数千年使われ続けた由縁でも在ると思います。だから、現代的なニーズの「無煙無臭」を捨てても、またその使用に戻りたくなる誘惑に苦悩させられるのです。
 前回には「伝統の智恵を現代に活かす治療」をしたいとも言いました。私は古典は学ぶべきだと思いますが、そのままに実行する原理主義では有りません。古代のやり方をそのままに再現したい訳では有りませんし、現代にマッチさせなければ活用は不可能だとも思っています。
 では、「スチール缶」バージョンまでの試行で解った事を構造化して整理して見ます。今回は、そのための図解を貼って置きます。

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 以前に、燃料の通過経路を四つの構成要素に分けました(熨法とは?-12参照)。その四段階を以下に再掲して置きます。
➀詰め口(台座把手側の開口部)
 →まだ加熱されず燃料は弾力性を保持している段階。
➁予熱部(筒状の金属で通気口の無い部分)
 →熱と煙のヤニがこもり、圧着されて固形化が進行する段階。
③通気燃焼部(筒状の金属で通気口の有る部分)
 →息で吹く通気に因って燃焼が始まり燃焼し易い通気性の成分から減少していく段階。
➃燃焼面(先端の開口部の空気に触れる面)
 →開口部の自然な通気に触れて継続的に燃焼し、蓄積した粉末炭が高温でユックリと燃焼する段階。

 燃料が焼け堅まって通過抵抗が増大して行く「詰まり問題」が、全体を陶器で作成している陶筒バージョンの段階から起きていた事は既に書きました(熨法とは-12参照)。以前は、それを解消するために「燃焼部の内径を数ミリずつ広げる」依頼を繰り返して改善しようとして居たのですが、依頼は通りませんでした(灸熨法-6参照)。当時は不満でしたが「もし依頼が通っていたら・・・」と今にして想えば、どれ程の時間と予算を浪費する羽目に陥ったのか・・・?と為るので、恐ろしくてそれ以上は考えたく有りません。
  つまり、スループット(throughput:中身の流出量・速度)を制約するボトルネック (bottleneck:スムーズな進行を妨げる隘路) は「燃焼部」で、そこだけを僅かに広げれば状況が改善されるのでは?と推測していたのです。
 しかし、依頼が通らなかった事で、自作のスチール缶バージョンで「予熱部」と「燃焼部」を共に一気に大幅に拡大する事に繋がり、反って良い結果が出たのです。つまり、「燃料が圧縮固形化されるメカニズム」は、予想以上に強力だった、と言えます。(「熨法」とは?-16へ続く)

当院の熨法について(22)、「熨法」とは?-14

 前回は、「スチール缶」バージョンに成って「悪い方の変化」として、内径が一気に大きく成ったので着火した最初の段階だけは燃料に今までには無かった別の要素を加える必要が出て来た話でした。
 その別の要素は「崩れ止めの支持」作用を持った上に、短時間で熱を起こして全体を安定的な燃焼へと移行させる「火付け」作用も兼ね備えた物として、ワラを最初に採用したので、また臭いと煙が大いに出てしまったのでした。
 この「臭いと煙」ですが、そもそもこの研究の根源的なイシューです(「熨法」とは?-1参照)。そのイシューを乗り越えて「無煙無臭化」を果たす為に、鍼灸師で在りながら私は「艾の使用」に見切りを付けて、粉末炭を中心に様々な燃料素材を探索してきたのです。そして現在では、「稲藁」に代わるより良い物が色々とある事が解っております。また着火用具も強力な物に換えて改善して来ました。今回は着火用具の写真を貼って置きます。


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 例えば「無煙無臭化」とは別の次善策として、焼肉屋さんの様な排煙設備を施術ベッドの上に設置してキチンとメンテナンスができるなら、陶筒バージョン(トウトウ:「熨法」とは?-8参照)に艾も混合・使用する「灸熨法」の段階で終えてしまっても良いのです。そうして終いたいという考えが浮かんで来た事も有ったのですが、その度に何かもう一工夫で上手く行くのでは?と思い直して何とか継続して来ました。
 私は鍼灸師として駆け出しの頃、ある先生から「高価なハイテク道具に頼っていると上達が遅く成る!」と言われた事があり、それが心の奥にシッカリと入って終った様です。電気温灸機などの、便利なハイテク機器が色々あるのは承知していますが、興味が湧きません。どうも私は、安価なローテク道具で伝統の智恵を現代に活かす治療がしたい様なのです。それだとやる気が湧いたのです。
(「熨法」とは?-15へ続く)
プロフィール
山口秀敏

関東鍼灸専門学校卒

東京医療専門学校
 鍼灸教員養成科卒

信州医療福祉専門学校付属
光和はりきゅう院 元院長

2000年に岡田研吉氏、岩井祐泉氏と森立之研究会を発足し、現在は事務局長兼講師。

「伝統医療 游の会」を会長・松田博公先生、副会長(2人)・杉山勲先生・足立繁久先生達と立ち上げ、事務局長兼講師。



店舗紹介
長野市若穂綿内  
8568-8
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(個別指導塾まつがく若穂教室様と同じ建物です)


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