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   寒さが厳しくなってきましたね!これからは寒風に当たり易いっ首筋や襟元の辺り等がカチカチに緊張して凝ったり痛んだりする患者様が多くなる季節ですので、そろそろマフラー等での寒さ対策をお勧め致します。
 また腰痛の様に直接的に冷えた場所で無くとも疲れが溜まって居たりして弱った部分にそれがキッカケとなって痛みが出たりもする様です。今回は、それら「身体の寒え」に対応する温熱療法について解説してみます。
 少し難しいかも知れませんが、まず針灸の古典を引用します。

➀火針と熨法について
『霊枢』寿夭剛柔篇「黄帝曰、刺寒痺内熱奈何。伯高答曰、刺布衣者、以火焠之、刺大人者、以薬熨之。」
 訓読:黄帝曰ク、寒痺ヺ刺スハ熱ヺ内レルトハ奈何ン。伯高答エテ曰ク、布衣ヺ刺ス者ハ、火ヺ以テ之ヺ焠(ニラ)グ、大人ヺ刺ス者ハ、薬ヺ以テ之ヺ熨(ヒノ)ス。」
  意釈: 黄帝が言いました。寒えで気血の流れが塞がって通じない状態には熱を内れると言われるのはどの様な事か?と。伯高が答えて言いました。体質の強い肉体労働者などの平民(布衣)には火針(火で鉄を赤熱して刺す針)を用います。体質の弱い貴族(大人)には、生薬の温湿布で縮こまった皺を伸ばす様に温熱します!と。

 ここでは「布衣」と「大人」の対比で言っていますが、刺激に強い体質の者と軟弱な体質の人では、治療法の「焠刺(火針を刺す事)」と「薬熨(生薬の温湿布)」を使い分けるべき事を説いています。
  では続きを引用します。

 ②薬熨の準備
寿夭剛柔篇「黄帝曰、薬熨奈何。伯高答曰、用淳酒二十斤、蜀椒一升、乾姜一斤、桂心一斤、凡四種、皆寐咀、漬酒中、用綿絮一斤、細白布四丈、并内酒中。置酒馬矢熅中、蓋封塗勿使泄。五日五夜出布綿絮、曝乾之。乾復漬、以尽其汁。毎漬必晬其日、乃出乾。乾、并用滓与綿絮、複布為複巾、長六七尺、為六七巾。」
  訓読: 黄帝曰ク、薬熨ハ奈何ン。伯高答エテ曰ク、淳酒二十斤、蜀椒一升、乾姜一斤、桂心一斤ヺ用イ、凡テ四種、皆ナ咬咀(カミクダ)キ、酒中ニ漬シ、綿絮一斤、細白布四丈ヺ用イ、并セテ酒中ニ内レル。酒ヺ馬矢熅中ニ置キ、蓋封シテ塗リ泄レ使ムル勿レ。五日五夜ニシテ布綿絮ヺ出シ、曝シテ之ヺ乾カス。乾ケバ復タ漬ス、以テ其ノ汁ヺ尽ス。漬ス毎ニ必ズ其ノ日ヺ晬エ、乃チ出シテ乾カス。乾ケバ、滓ト綿絮トヲワセテ用イ、複布ヺ複巾ト為シ、長サ六七尺ニシテ、六七ノ巾ヺ為ル。
 意釈: 黄帝が言いました。薬熨とはどの様に行うのか?と。伯高が答えて言いました。淳酒(濃い濁酒)を二十斤、蜀椒を一升、乾姜を一斤、桂心を一斤用います。この四種を、全部嚙み砕き酒の中に浸します、綿絮(まわた)一斤、細い白布四丈を并せて酒の中に入れます。蓋をし封を塗って泄れない様にした酒を乾燥馬糞を燃やした火熱の中に埋めて置き、五昼夜たったら布と綿絮を出して晒して乾かします。乾いたら復た浸してその汁が尽きるまでこれを繰り返します。毎回一昼夜漬け込んでから出して乾かします。乾いたら滓と綿絮とを細布を六・七尺の長さに切って六・七個に作った袋に入れます。

 この「薬熨(生薬の温湿布)」の準備には大変な手間・暇と材料費が掛かりそうですね。

③薬熨法
 寿夭剛柔篇「則用之生桑炭炙巾、以熨寒痺所刺之処、令熱入至于病所。寒、復炙巾以熨之、三十遍而止。汗出、以巾拭身、亦三十遍而止。起歩内中、無見風。毎刺必熨。如此、病已矣。此所謂内熱也。」
   訓読: 則チ之ヺ生桑炭ヺ用イテ巾ヺ炙リ、以テ寒痺ノ刺ス所ノ処ヺ熨エ、熱ヺシテ入リテ病所ニ至ラ令ム。寒ユレバ、復タ巾ヺ炙リ以テ之ヺ熨エ、三十遍ニシテ止ム。汗出レバ、巾ヺ以テ身ヺ拭イ、亦タ三十遍ニシテ止ム。起キテ内中ヺ歩キ、風ニ見ウコト無カレ。刺ス毎ニ必ズ熨ス。此ノ如ケレバ、病已ユ矣。此レ所謂ル熱ヺ内レルナリ。
  意釈: 使う時は生桑の炭を用いて袋を炙って寒痺の刺針する所に当てて温め、熱を入れて患部まで浸透させます。冷えたらまた袋を炙って当てて温め、三十回繰り返したら止めます。汗が出れば、布で身体を拭い、また三十回繰り返したら止めます。そして寝床から起こして室内を歩かせますが、風に当たらない様にさせます。刺針の度にかならずこの様に熨法で温めれば病は治癒します。これが「熱を内れろ!(寒痺ヺ刺スハ熱ヺ内ル)」と言われる事なのです。

  掛かる手間・暇と材料も有りますが、なんとも贅沢な治療ですね!